

高城ちひろ
導入
若くて美しい高城(たき)ちひろは野心にかられ東京芸術大学絵画科・油画専攻を卒業後、フィレンツェアカデミア美術大学で5年間勉強し、2018年秋日本に帰国。高城はディティール・ニュアンスに神経を注ぎ、夢幻の中のリアリティを感じされる魅惑的でチャーミングな絵画を制作しています。
" わたしは幼い頃から夢をよく覚えている。夢であった出来事か、現実であった出来事か分からなくなる事もある。ほとんどが焦っていたり、怖かったり、苦しい夢だ。朝目が覚めた時の疲労感は、起きている時のそれとは少し違う、どしりとした疲れ。わたしの制作は、そこから始まる。
夢は気が付かなかった自分の欲望や恐怖、見ないふりをしていた部分に気づかせてくれる。そんな「夢」を描く事は、恐怖と闘ったり、気持ちを消化していくための大事な行為だ。絵に登場するのは、大人になる事への不安を抱えた自分の分身。わたしは今日も夢の中で少女になる。"
高城ちひろ
Highlights
《A Small Saviour》
2023年
ジェッソ、油彩、木材、木製パネル
91 × 72.5 cm
《A Small Saviour》 は、夢と現実のあわいに浮遊する、謎めいた水中の情景を描いています。ひとりの女性が水面下を漂い、その身体は細い赤いロープによって海底の岩へと結びつけられています。そして、そのロープが岩へと辿り着く場所には、この作品における思いがけない「救世主」として、小さな白い蟹が姿を現します。
本作は、脆さと救済、重力と浮遊、沈降と結びつきといった相反する要素のあいだに生まれる緊張関係を探求しています。深く輝く青の広がりは、危険と静けさを同時に想起させる一方で、小さな蟹は静かなユーモアと希望を作品にもたらしています。ここでの救済は英雄的な介入として訪れるのではなく、むしろ儚く、ささやかで、見過ごされてしまいそうなかたちで現れます。
幾層にも重ねられた透明感のある青と漂う有機的なフォルムによって、高城ちひろは映画的で夢幻的な空間を生み出しています。また、画面を縦に貫く赤い線は、構図上の軸であると同時に象徴的な生命線として機能し、漂う人物と水底の見えない世界とを結びつけています。
本作は固定された解釈を拒み、意味は物語によって説明されるのではなく、雰囲気や感覚、そして静かな思索のなかからゆっくりと立ち現れてきます。

作品
























