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新作発表会
高城ちひろ
「受胎告知」
テンペラ、金箔、木製パネル
64 x 95 cm

《受胎告知》において、高城ちひろは、自らを聖母マリアになぞらえ、半ば神的な存在である大天使ガブリエルを狼の姿で描くことで、この聖書の物語を大胆に再解釈している。ルカによる福音書に由来する伝統的な図像と物語構造に挑みながら、現代社会における女性のあり方とアイデンティティについて独自の視点を提示する作品である。女性として成長していく過程において、高城は「自ら選択すること」を自己発見と主体性を獲得するための不可欠な条件として捉え、家父長的な価値観への従属を拒み、創造する個人として自由に生きる未来を志向している。
「受胎告知」は何世紀にもわたり数多くの芸術家によって描かれてきた主題であり、その多くは男性画家によるものであった。1305年頃のジョットのフレスコ画から15世紀後半のレオナルド・ダ・ヴィンチに至るまで、マリアがガブリエルと対峙する場面は、受容や歓喜、悲しみ、あるいは拒絶など、時代ごとの女性像や宗教観を反映しながら多様に表現されてきた(1)。
高城の作品では、聖母マリアの代わりに一人の少女が大きな椅子に腰掛け、その前には狼の頭を持つガブリエルが跪き、一粒のキャンディを差し出している。このユーモラスで皮肉を含んだ設定は、宗教的象徴を現代的な寓話へと転換させている。使者は少女に対し、妻となり母となること――社会が理想とする女性像――を告げる。しかし少女の表情は恐れも喜びもなく静かで、その申し出に心を動かされることはない。甘いキャンディによって象徴される誘惑にも応じず、自らに課せられた役割を受け入れることを拒否する。その穏やかな表情と狼の鋭い眼差しとの対比は、画面に強い緊張感を生み出している。
作品にはさらに象徴的なモチーフが重ねられている。伝統的な受胎告知において鳩は純潔、従順、そして聖霊の象徴として描かれるが、高城はそこに鳩だけでなく、独立心や知性の象徴として知られるカラスを加えている。この組み合わせは、現代における女性の主体性や自立を象徴し、女性像が従順さから知性や複雑さ、そして反抗の可能性へと変化してきたことを示唆している。こうした象徴の変容は、歴史的な女性像と現代的な価値観との対話を浮かび上がらせている。
高城の《受胎告知》においてガブリエルに「ノー」を突きつけることは、画家として、そして創造者としての自己を選び取る行為を意味している。この作品は、社会から期待される役割よりも、創造性と主体性に満ちた人生への希求を描き出し、身体的・精神的な強さと自律性を肯定するものである。同時に本作は、女性の美徳や女性性をめぐる価値観が時代とともに変化し続けていることを示し、ルネサンス以来描かれてきた女性像に対する現代的な応答として位置づけられる。
(1)
ジョット(1305年頃)は、マリアの受容と従順さを称揚し、シモーネ・マルティーニ(1333年頃)は、戸惑いと身を引く仕草を強調した。フラ・アンジェリコ(1433–34年頃)は穏やかな受容を描き、ピエロ・デラ・フランチェスカ(1452–57年頃)は不安と問いかけるような姿勢を表現している。サンドロ・ボッティチェリ(1489–90年頃)は、目を閉じ気を失うようなマリアの姿によって、神意を受け入れる運命を象徴的に示した。一方、1470年代後半のレオナルド・ダ・ヴィンチの《受胎告知》では、女性は神性を地上にもたらす媒介者として、「感性的超越者」としての存在が示唆されている。
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