
渡邉 野子
About Love. Like a Monster
2019年 10月21日ー11月09日
近作のコンセプトのひとつは「対比における共存」です。それは「相容れないものが出会う一瞬間を絵画の美しい状態として表すこと」です。このコンセプトは、現代世界に生きる画家としての課題であると考えています。
混沌と無秩序は現代世界を表すひとつの見方ですが、別の見方をすれば、それは多様で無限のポテンシャルを秘めた状態です。異なるものの対立は人生で絶え間なく起こります。それを軋轢や不調和として見るのではなく、互いが輝くためのもっともインタラクティブでアクティブな瞬間としたい。わからないものとの突然の出会いは、新しい世界に向き合い変容する自分との出会いであると考えることもできます。
人には自身の価値や行動を決める枠組みがありますが、普段意識することはあまりないかもしれません。自分自身にとって本当に必要な価値に気づき、目に見えない、自分自身でさえも気づいていない内在する偏見や、既存の価値観、さまざまな呪縛から個々が自己を解放できれば、社会が動き始めると考えています。
私の絵は「わからない」絵画です。絵画は理解するものでなく、経験し感じることからすべてが始まります。見る人自身がクリエイティブな自分を発見するために、絵画の前に立つことが、新たな選択肢を生み出す場になることを私は求めています。多様な選択ができることは創造的で寛容性があることです。自分がクリエイティブであることは、他者に対しても寛容でいられることです。作品を見ることが、「自由であることについて」問い直す場になることを私は望んでいます。
「抽象的であること」はひとつのキーワードです。抽象的な概念を受け入れることは客観性を保つことにも関わっています。主体としての自己や、他者にありのままに向き合うことを実現しようとするとき、人は俯瞰的に、自己の外在的アクシデントを受容し、昇華することが必要とされます。抽象性へより深くアプローチするとき、人間の官能性がその原動力となると私は考えています。
本展のタイトル「GLITTER」は「ぴかぴか光る、きらきら輝く、きらめく、きらびやかである、人目を奪う」などの意味があります。多様なストロークと線が何層にも折り重なり、抽象と具象のはざまを行き交う構成と、複雑な混色と光線によって変化する色彩は、油彩の艶やかさと重なり、観察者の皆さんの「官能性」に直接働きかけます。作品がglitterであることにより、絵の前に立つ皆さんにもglitterのような様相や変化が現れたり、皆さんがそれを構成する一部になることを考えています。
私は最近、絵画が社会を変革できると確信しています。もっとも自由な方法で世界を観ることができるアイデアに溢れたもの、それが絵画であると感じています。
本展が、アートを通じた開かれた対話の場になることを心から願っています。
2018年9月24日
渡邉 野子 (画家・美術家)
展示作品


渡邉 野子

私の制作テーマのひとつは、絵画における「線の表す領域」によって、観察者が自身の身体、時間、空間のふくらみなど、不可視のものの在り様を知覚することです。画面上で線はそれぞれに役割を与えられ、時系列的な層でなく、お互いが交差し絡み合いながら全体としてひとつの連続した状態を生み出しています。絵画が示すもの、それは何かが崩れる前の一瞬間や未完の絵画の歴史です。そして、振動するのは崩れゆく事物や移ろう時間ではなく自身の身体であり、不安定な私達の身体を前にして、絵画は「ここ」と「いま」を提示しながら私達に触れています。世界のすべてが変化しても変わらな いものを絵画のなかに表現することが私の関心事のひとつです。














