

イトウナホ
私が絵を描く時にいつも思いを馳せるのは、昔々とても昔、ヒトがある内的衝撃を受け て感じた、ある戦慄のことです。そのふるえは、ヒトにまだ意味をなさない言葉を発せ ざるをえなくさせて、ヒトをある一人の人間に、そして個人にさせたものです。私は今 私たちが生きているこの現在の地点から、あの戦慄にたどり着きたい。 そして私は線を引き、色を塗り、水を引いて、一つの絵を描き始めます。私は壮大な物 語や、確固としたイメージ、何らかの個人的主張やメッセージを描いているのではあり ません。どこかへの道が一つではない様に、あらゆるものが交錯し、矛盾に満ちたこの 世界で、決定的であるものはなく、そしてあらゆるものは、動いている。 私は、その矛盾をそのままに放棄することなく、相容れないもの、受け入れられるもの、 親しいもの、親しくないもの、似ている様で全く別なもの、様々なそれらが織りなす調 和というよりは、それらが互いに個別なまま認め合ったある瞬間の緊張を描こうとして いるのです。しかもその瞬間は、動いている。それはあの初めての戦慄にも似た、ある 種の貴さを持っていると思うのです。そして、その間隙に、光が垣間見える。そういう 絵を描きたいと思っています。
イトウナホ

想起 2020 Japanese pigments on paper 60.5 x 91cm

語り語りかけられる言葉たち 2019 Japanese pigments on paper 130.4 x 194 cm

言葉もなく Japanese pigments on paper 53 x 33cm

よりそう 2019 Japanese pigments on paper 32 x 41.2cm

内なる言葉 2019 Japanese pigments on paper 38 x 45.5cm

時 2019 Japanese pigments on paper 22 x 33cm

かたこと 2019 Japanese pigments on paper 24.2 x 33.3cm

断片 2019 Japanese pigments on paper 24.2 x 33.3cm

ある言葉 ーすべて私と同時的なる純粋な関係ー